SEASON

特に話すこともなく、車は黙々と進み15分程度で止まった。

「付いてきて」と言う丹羽さんに無言で頷き、背中を追う。

あるビルの中に入り、沢山横並びにある扉の一つに入っていく。

続いてあたしが入ると一番最初に目が付いたのは茶髪とそれより明るい髪の男の人たちだった。

「この子が?」

「千明、怖がらせんなよ」

2人してあたしを見て言う。

いまいち状況がわからなくて唯一知り合い(?)の丹羽さんを見ると笑い返してくれた。

「アイツらのことはほっといて構わないから。んじゃ、早速だけど弾いてもらえる?」

ギターを弾くためにここに来たのはわかるけどめったに人前ではやらないから恥ずかしい。

そんなあたしに丹羽さんは「はやく」と急かして、もうどうにでもなれ!的な半分やけくそで弾き始めた。

初めて弾く曲に戸惑いはしたけど練習していくうちにこの曲のことがなんとなくわかってきた。

題名とか歌詞とかは一切書かれていなかったけど、感じ的に明るい、暖かさや爽快感みたいなものが伝わってきた。

春の陽だまりって感じ。

あたしがこの曲に歌詞をつけるなら春をテーマにするだろうな。

弾き始めるといつも夢中になって気がつけばもう終わっていたということがたびたびある。

それは今回も当てはまり、ハっ、とするとすでに手は止まっていた。

うまく弾けたかわからない。

いろんなところ間違えたかも……。

間違えすぎて指摘する気にも起きないからこんなに静かなのかもしれない。