SEASON

「サプライズだよ。文化祭にはつきものだろ?」

いや、高校の文化祭は計画通りに進めることができて初めて成功したと言うんじゃ…。

一旦手の動きを止めて悪戯っぽく陽生は笑いまた作業に戻った。

「それに俺と千秋、ここの卒業生だし」

「えっ、そうなの!?」

それも初耳だ。

今日はやけにサプライズが多いなぁ…。

「受けたものはしょーがないから諦めろよ。高校っつっても一応お客さんだしな」

にかっ、と笑って陽生は身を乗り出して車の中から黒いキャップボウを見つけてあたしの頭に無理やりのせた。

「それでもかぶっとけ。少しは演奏に集中できるだろ」

「…ありがと」

昨日この話を聞いた時は猛反対した。

だってさ、どっかの高校の文化祭ならまだしもあたしが通ってる学校の文化祭でやるって嫌じゃない?

あたしは少なくともいい気はしない。

それに明日とか言われても心の準備とかが出来ない。

しかも、知り合いの前でとか…考えただけで恥ずかしい。

あたしがバンドやってること誰にも言ってないし。

こういう事を早口にまくし立てたら「ドタキャンとかするヤツ最低だよな?」と陽生に言われ黙るしかなかった。

静かになったあたしを見て陽生はニンマリと笑った。

こうなることを見越してあたしには直前まで言わなかったんだ。