気づいた男達は、


腰から警棒のようなものを手にとって構える。



リクは突進しながら、


三人のうちの一人が構えに遅れを取ったのを見た。



その男めがけて、


大きくジャンプしクワを打ち下ろす。


すぐさま振り返り、


残りの男二人に対した。


「ぐあああっ!」


リクがクワで打った男は


左の肩を押さえてのたうち回っている。


クワの歯が、男の肩口を割いた手応えがリクの手に残っている。


肉は深くえぐれ、骨も折れているだろう。



残りの二人は、


リクを左右から取り囲むように


間合いを取った。



アカデミーでは、


剣術武術は必須科目である。



その中でも、リクは無敵に近かった。



そうだ、


ティアに勝っているものが


チェス以外にもあったじゃないか。



そう思ってリクは内心で笑っていた。


リクにとって


「実戦」


は初の体験であるはずなのに、


こんなに落ち着いているということが


自分でも不思議だった。



得体の知れない二人の男に囲まれてはいるが、


恐怖よりも、


闘いそのものを楽しんでいるようだった。