そんなナツキに俺はそれ以上は聞けなかった。 ただ優しくナツキの髪を撫でる。 平然とした態度の裏で、俺は嫉妬していた。 野良猫みたいに気まぐれなナツキが、特別だという存在。 出会って一週間の俺からは到底届かない遠い位置。 ただ、安心した所もあったんだ。 嘘ばかりついていたナツキが、本当の過去を話してくれるようになってきたこと。 少しは心を開いてくれたのかと期待する。 「俺は君の記憶に残れるかな」 ナツキは少し考えて、その意味を汲み取ろうとした。 「そうね」 そう静かに呟いた。