艶やかな長い黒髪が華奢な肩にさらりと垂れる。 一つ息をついて、視線を俺に寄越すナツキ。 「誰と比べて、特別になりたいの?」 その目はわずかに憂いを帯びている。 黙り込んだ俺に、ナツキは続けた。 「あの夜あたしは貴弘を選んだわ。それは特別ってことでしょう?」 俺は躊躇いがちに一つ頷く。 「ただ……」 「ただ?」 ナツキはまた少し困ったような、切ないような瞳を向けた。 「あたしの生涯において特別な存在はただ一人しか居ないの」