時折漏れる二人の吐息に混じって香るシトラス。 俺はその匂いに酔いしれそうになる。 むさぼるみたいにナツキの唇に吸い付くと、ナツキもそれに応えてくる。 めちゃめちゃにしたい。 全部俺のものにしたい。 ナツキの全部が欲しい。 だけど俺はその先には進めない。 躊躇してしまう。 契約する前だけど、一度断られているし。 ナツキのこと、何も知らないままだし。 そんな俺の思いを知ってか知らずか、ナツキは熱を帯びた瞳で見てくる。 俺は曖昧に笑ってごまかした。