すぅっと呼吸を整えるナツキ。 「彼の心臓の音がしなくなった時、目の前が真っ暗になったわ」 キメの細かい頬を涙が伝った。 「全て失った。残ったのは眩しすぎる思い出と罪の意識だけだった」 溢れる涙は終わりを知らないように思えて、俺は戸惑った。 ナツキは拭うこともせず、ただ話し続ける。 「愛しすぎる彼の記憶から逃げたくて、あたしは街を飛び出した。他の男に寄り所を求めたわ」 ナツキとの出会いを思い出す。 よれたボストンバッグとキャミソール。 野良猫みたいなとびきりの美女。