どれくらい歩いたかわからなかった。


気づいたら家に着き、すぐお風呂に入って体を洗った。


洗ったって汚れた体はきれいになることなんてないってわかってるのに、あたしは気が済むまで、バカみたいにずっと洗い続けた。


涙なんて出なかった。


昨日まではたくさん、たくさん翼に愛されていた体なのに。


たった1日で、いまは……。


そのとき初めて、たまっていたものが溢れ出して、涙が止まらなかった。


あのとき、なんでコンビニなんて行ったんだろう。


あたしに残ったのは後悔だけだった。


お風呂からあがると、体中がヒリヒリした。


あたしは部屋に閉じこもってピッチを手にとった。



着信11件/留守電6件



全て翼からだった。


「流奈~?なにしてんのかな~?もう着くからね」

「おい!なんで出ないんだ?支度できてるのかな?」

「流奈……、どこにいるの?なんでいないの?」

「連絡ください……」

「流奈がみつからないよ……。流奈どこにいるの?なんかあったの?」

「絶対なにかあったんだな?流奈、見つかるまで捜すから……かならず捜すから」


最後の留守電を聞き終えると、電源を切って布団に潜った。


午後8時すぎの翼からの着信。


あのときちょうどあたしは……。


そう思うと、悔しくて苦しくて胸が痛かった。


翼を思い涙が止まらなかった。


本当はいますぐにでも逢いたかった。


でも、なにもなかったかのように翼のそばで笑えなかった。


かと言って、真実なんて言う勇気さえなかった。


これでいい。


嫌われればいいんだ……。


あたしは翼からもらった指輪を握りしめ、ずっと声を押し殺して泣いた。


翼との幸せな日々がまるで夢のようだった。