「今日のデートは緊張するよ。だって、センスが問われるんだからね!」
「なに?なんで?」
「流奈は俺をコーディネートして!俺は流奈をコーディネートするから」
「えーっ、無理だよ~、そんなのムリムリ!」
「言っとくけど俺、センスねぇーよ。でも、流奈は俺のために服を選ぶの!俺は流奈のために服を選ぶんだ」
「わかった……」
「よし、決まりな」
「じゃあ、流奈が先に俺の選んで」
「嫌だよ~、わからないもん」
「流奈から!」
「もう~。わかったよ」
翼はいつもヤンキー服。
刺繍入りのジーパンに刺繍入りの上着だったり。
なのに、どうやって変身させればいいんだろう。
翼をじーっと見て考えた。
「じゃ、俺は流奈の洋服見つけてくるから、1時間後、ここで報告ね!」
「わかったよぉ……」
「じゃ、後で!なにかあったら、すぐピッチ鳴らして」
翼はそう言い残して、すぐに行ってしまった。
まったく、翼ったら次から次へと予想もつかないこと考えると考えるんだからぁ。
残されたあたしは、どうしていいかわからず、いくつも並んでいるメンズのお店をグルグル回った。
「翼に普通のジーパン?合わないよなぁ……」
色々なお店を出たり入ったりしていたら、ますますわからなくなった。
「翼ってば、よくレディースのお店にひとりで入れるよなぁ」
翼の選んでいる姿を想像したら、ちょっぴり笑えた。
結局、あたしが足を止めたのは、ヤン服が並んでいる小さな店だった。
「やっぱりここしかないよなぁ」
手に撮っては起きを繰り返し、一生懸命探した。
「あっ、これがいい!」
あたしが目をつけたのは、ストライプが入ったグレーのスーツ。
翼は背も高いし、ガタイもいい。
これに黒いハイネックを合わせたら、翼なら絶対に似合うはず。
「いいじゃん♪決まり」
すぐに店員さんに取り置きしてもらうよう、お願いした。