あたしは友達に電話をして原チャリを借りた。
そして、翼をいつも一緒に行っていた海に向かった。
ちゃんとヘルメットをかぶって。
いつも翼と行くときにはすごく近くに感じたのに、ひとりではすごく遠かった。
このままサヨナラかもしれない。
そう思うと涙しか出なかった。
11月ともなると日は短く、海に着いたときには真っ暗だった。
こんなに寒かったっけ……。
ひたすら泣いた。なにかを忘れるかのように……。
同じ海なのに、空も波の音も風の心地よさもすべてが違った。
翼から電話が鳴ることはなく、あたしは星のない空をただ見ているだけ。
しばらくして、あたしは来た道を帰った。
本当にひとりぼっちになった気がした。
頭の中には翼のことばかりで、どうしようもなかった。
その日以来、翼からの連絡はなく、あたしが連絡することもなく1週間が過ぎた。
“帰っていいよ”
翼の最後の言葉だけが頭の中でただ繰り返された。
翼はあたしにもう愛想つかしたんだよね。
こんなに好きなのに、翼にはこの気持ちが届かない。
こんな恋愛したことなくて、相手の愛さえ感じられれば自分の気持ちなんてどうでもよかったのに。
こんなに苦しくなることもなかったのに。
いま、あたしは翼だけを求めている。
必要としているんだ。
なにもやる気が起きなかった。
でも理恵だけは、こんなあたしに毎日のように電話をくれた。
「流奈?翼くんに電話しなよ。このままでいいの?」
「もうダメだよ。今更できないよ……」
「マジでなんなの?流奈は勝手すぎる!翼くんの気持ち考えたことあるの?そんなんじゃ本当に翼くん、流奈を諦めるよ」
理恵からの最後の電話。
それからはかかってこなくなった。
わかってるよ。でも、しょせん人はみな、ひとりぼっちなんだ。
孤独に陥った。
あたしらしくなかった。
もうほかの男じゃダメなのに、なにも埋まらないのに、素直になれなかった。