放課後、理恵は先に帰ってしまった。


どんな時も待っていてくれたのに……。


あたしはひとり駐輪場に向かい、隅に隠していた単車に跨った。


“悪いことしない”

“次はないんだからね”


翼と理恵の言葉が頭の中を駆けめぐった。


あたしは単車を置き、家に向かった。


「いいんだ……これでいいんだ……。ほうっておけばいい」


学校に乗りこみ仕返しをしようとしたヤツらへの怒り。


世間から自分たちを守ることしか考えてない先生たちへの怒り。


それらを振り切るかのように、何度も何度も自分に言い聞かせた。


家に帰る途中、翼から電話があった。


「もしもし?」

「お疲れ様~!」


なにもなかったかのように会話した。


「いまどこ?」

「学校終わったところだよ!」

「俺、もう仕事終わったからさ、久々にゆっくりデートしよ」

「うんっ!じゃあ支度しておくね」


さっきのやり場のない怒りは嘘のように消え去り、あたしはウキウキ気分で家へ向かった。


「あれ……」


家の近くまで来たとき、3人の女たちがたまっているのが見えた。


「おい、こら!てめぇ、逃げてんじゃねぇよ~」

「あっ!もしかしてビビっちゃったぁ?学校じゃあ、みんなの前だし、イキがるしかないもんなぁ~」


言いたい放題の女たちに、あたしのイライラは頂点に達していた。


ダメ……、逃げられないよ……。


ごめん、翼、理恵。


あたしは女たちに近づいた。