「なんなんだよ、てめぇはよ~!なに笑ってんだよ!!」

「妹の敵討ち?ご苦労さんだね。放課後行くから持ってろよ!」


あたしは高笑いしながら、その場を後にした。

 
後ろで女たちの叫び声と先生の怒鳴り声が聞こえた。


「……ったく、だりぃ~」


イライラをおさえながら、学校から出ようと校門のほうへ歩きはじめた。


「ちょっと待て!」


振り返らなくてもわかる村上の声に、足が止まった。


「なんだよ」

「ちょっと来い」

「ぁあ?わかったよ」


村上の後を黙ってついて行き、校舎へ戻り1階の相談室に入った。


いつもあたしが呼び出される場所。ただ、今回は犯行する気も起きなかった。


「頼むから、これ以上、問題起こさないでくれ。……迷惑なんだ」


“迷惑なんだ”


その一言で、急に頭に血が上った。


「わかってるよ!学校に迷惑かけなきゃいいんだろ?悪いね、後で謝りに来させるわ」


そう言いながら、ドアを思いっきり殴った。


イライラがおさまらない。


「あームカつく!」


ドアを思いっきり開けると、相談室の目の前で、理恵があぐらをかいて座っていた。


「流奈?ちょっと待ってよ!」

「なに?」


怒りがおさまらず、理恵にも冷たく当たった。


「バカみたいだよ。翼くんになんて言われたの?忘れたの?約束……」


理恵の言葉で我に返った。


悪いことしない。ケンカも。


翼との約束ーーーー。


「わかってるよ……。でもああなったら、あとなしくしてろってほうが無理なことくらい、理恵ならよくわかるでしょ?無理だよ!そんなの」

「流奈にはもう次はないからね?捕まっても知らないから!今日行くなら行けば?」


理恵はそれだけ言い残し、去っていった。


翼との約束。


理恵のあたしを思う気持ち。頭ではわかっていた。