「流奈、なんてお願いしたの?」

「えっ!?言ったら効果なくなっちゃうよ」

「だよな!」


ふたりで大笑いした。


「また冬に来ような!」

「来よう、来よう!」

「そして春にも来て、夏にはここの海で遊ぼう!」

「クラゲが出る前ね!」

「ハハハ!プールじゃなくてな」

「うんっ、そぉーだね」

「あっ、でもこれからビキニ禁止!」

「なんでよ~、嫌だよ」

「だって俺、嫉妬するよ」

「いいじゃん!」

「よくねぇー。流奈の体をほかの男が見てると思うと、ムカつくから!」


翼のスネた顔が愛しくて、あたしが笑うと照れくさそうに目を反らした。


「たくさん、たぁ~くさん思い出作ろうな!」

「たくさんね!」

「よし、また明日から頑張ろう仕事!」

「流奈も頑張る!」

「よし、いい子だ」

「翼?ありがとう……」

「えっ、なにが?」

「好きになってくれて、幸せにしてくれて。流奈ね、翼と出逢わなければ本当、終わってたよ」

「流奈、それは違うよ。流奈が変われたのは俺のおかげじゃないんだよ。自分の意志なんだ。俺は、ちょっと背中を押しただけなんだよ」

「翼のおかげなの!翼がいてくれたから」

「違うよ、人はみんなやればできるんだよ、なんでもね」

「そうかな・・・…、やればできるのかな?」

「できる!かならず」

「でも、やっぱり翼のおかげなの」

「アハハッ!そっかそっか。こんな俺でも、流奈を変えられたか~」

「翼だからね!翼だからだよ?」

「俺もやっと生きる意味、見つけたよ。きっとどうしようもなかった俺に、天国にいるアイツが天使を運んできてくれたんだ」

「天使とは、ほど遠いけどね!」

「俺の天使だよ」


翼が好き!すご~く好き!!


心の中で何度も叫んだ。


「寒いからそろそろ行くか?」

「うん!」


しっかり手をつばぎ、もう一度星空を見上げ、あたしと翼は2回目の夜の海を後にした。