部屋に入って、翼のピッチ番号を書いた紙を持ってベッドに潜り込んだ。


あたしは翼のことを考えながら、紙切れを見つめていた。


さっきまで一緒だった翼。


あたしの目の前に突然、現れた翼。


信じられないような出来事ばかりだったけど、けっして夢なんかじゃないんだ。


あたしのひどい姿が夢じゃなかったことを物語っている。


初めて会ったとき「なんなの?コイツ!」ぶっちゃけそう思っていた。


でも、いまはあの優しい笑顔が忘れられなくて、頭の中は翼のことばかり……。


電話すればいいのにできない自分がいた。


自信過剰なあたしが1枚の紙切れ片手に勇気を出せずにいた。


どんどん時間だけが過ぎていく……。


翼は明日はきっと仕事。


早くしないと寝ちゃうかもしれない。


そのうち時計の針だけを見つめていた。


「11時!11時になったらかける!」


自分に言い聞かせた。