「なんだか少し風冷たくなってきたな」

「うん」

「帰んないの?」

「帰らない」

「そっか……」


しばらく無言が続いた。でも翼はあたしに何ひとつ聞いてはこなかった。


「俺んち行く?」

「えっ?はぁぁ!?」

「なに?いまなんか変なこと考えた?」

「はぁ?なにが?」

「ハハハッ!俺はそんなこと絶対しないから大丈夫だよ」

「なに言ってんの?」

「手出さねぇから。ここにいつまでもいると風邪ひくぞ!」


顔が熱くなすのが自分でもよくわかった。


「いいよ、ほっといて。ここにいるから」

「なに言ってんだよ、危ねぇから」


翼は笑顔を見せ、あたしに手を差し出してくれた。


あたしは照れながらも、翼の手を掴んで立った。


「痛っ!!」

「えっ、今度はなに?」

「なんでもない!」


翼があたしの顔を見た。


「どこが痛いんだよ」

「なんでもないよ」

「嘘だ。どこが痛い?」

「ちょっと足が……」


翼の険しい顔を見て、正直に答えた自分がいた。


翼があたしの足元を見た。