「痛ーーっ!」


びっくりして、大声をあげると、


「痛くねぇよ、これぐらい。殴られたほうがよっぽどいてぇだろ?」

「そういうときは必死で、痛さなんてわかんねぇーの!」


大きな男の手で絆創膏を顔に貼ってくれた。


「よし!これで応急処置完了!」


あたしの頭をポンポンと叩いた。


「……り……が……とぅ」

「なに?なんか言ったぁ?聞こえねぇ」

「……あ……りがとね」

「はい?なんて?」

「もう言わない!いまのは聞こえているはずだもん!」

「ハハハ!どういたしまして」

「……」


沈黙のなか、ふたりの間を涼し気な風が吹いていく。いっそのこと、このままあたしの心まで飛ばしてくれたら……。


そう思っていた。


「でも、だっせぇな、その顔、ブチャイクだよ」

「うるさいよ、もう」

「なぁ〜んだ、笑えんじゃん」

「えっ!?」

「笑ってる顔、かわいいよ?」

「……」

「まぁ、顔治ったら逆にひどかったり?」

「本当ムカつくんだけど!!」

「ってか、今さらだけど、名前なんていうの?」

「なんで?」

「なんで……って、聞いてるんだよ!救いの神様になんてこと言うんだよ」

「えっ?誰が神様だって?」

「はい!はい、俺……俺!」


手を挙げて優しく微笑む顔に、一瞬だけドキッとした。