翼がこの世を去って1週間が経とうとしているのに、まだ翼がこの世からいなくなったことが信じられなかった。


最後に見た、変わりはてた翼の顔が、あたしには別人に思えてたから、もしかしたら、
本当は違うんじゃないか。


そう思うくらいにまだ信じられなかった。


翼の告別式。


翼が骨になっちゃうと考えただけでも恐ろしくて、信じたくない自分がいた。


時計の針が7時をまわろうとしていた頃、あたしは久しぶりに部屋のカーテンを開けた。


外は雨が降っていた。


まるであたしと翼の代わりに空が泣いてくれたかのように。


ニュースでは晴れるっていっていたのにな……。


翼?翼もつらい?苦しい?寂しいの?


そう思いながら、窓の外を見つめていると、ドアが開き、お母さんが顔を出した。


お母さんは、あたしがこんなに早く起きているとも思わずに勝手に入ってきた。


あたしはお母さんに気づきながらも、また窓の外に視線を戻した。


「……お母さん、流奈のね……、好きだった人、死んじゃった」


気づいたら、そうお母さんに話しかけていた。


お母さんはびっくりした様子で、あたしの顔を覗きこんだ。


「……流……奈……」


お母さんはあたしを抱きしめた。


「しっかりしなさい!しっかりするのよ、流奈!」
 

そう言いながら、あたしの体を揺らした。


「痛いよ……、お母さん……」
 

お母さんは離れた。


「ごめん……、流奈。胸痛いよね」
 

お母さんはあたしの胸をなでてくれた。


「ごめんね、お母さん。こんな娘でさ、恥ずかしいね」
 

お母さんはなにも言わず、涙をこぼした。


その姿を見て、すごく心が痛かった。
 

みんなあたしのせいで傷ついて、悲しんで、苦しんで。


みんなあたしのせいで。どうしようもないね、


あたし……。