しばらく経ったとき、1台の車があたしの横で止まった。


「ねぇ、なにしてんの?ひとりじゃ危ないよ?」
 

ふたり組の男が声をかけてきた。


「遊びたいの?それともヤリたいの?」

「なにスネてんの?あっ、わかった!彼とケンカしたの?」


その瞬間、あたしの中のなにかがキレた。


「うるっせ~んだよ!」 


怒りが込みあげ、車を蹴とばした。


その瞬間、体中に痛みが走って、その場にしゃがみこんだ。


「てめぇ~!このくそガキが!!」
 

助手席の男が降りてきて、しゃがみこんでいたあたしを蹴った。


「うっ……!!」


蹴りが肋骨に直撃して息を吸えなかった。


「ねぇ……、殺してよ……。そのまま殺しちゃって……」
 

あたしは男のズボンにしがみついた。


「気持ちわりぃ~、この女、頭おかしいぞ~!」
 

まるでケダモノを見るかのように冷めた目で見つめ、逃げるように車で走り去っていった。



殺しちゃってよ。



翼……翼……。


頭ん中はただそれだけで、翼のところに行きたかった。


でも、でもあたしはまだ死ねない。


ちゃんと罪を償わなければ死ねないんだ。
 

必死になって立ち上がり、家に向かった。


フラフラになりながらやっとの思いで歩いてるあたしを、通りすぎる人たちは不思議そうに覗きこんでいた。それでも必死に歩きつづけた。


家に着いて鍵を開けたら、チェーンが閉まっていた。


あたしが夜遊びをはじめた頃は、何度か閉め出しをくらっていたけど、最近は家に帰っていなかったせいか、閉め出しをくらうこともなくなっていた。


でも、この日にかぎって、あたしは家に入れなかった。


いままでのあたしなら、「開けろよ!」と怒鳴っていたけど、もうそんな元気もなく、玄関の前に座りこんだ。



孤独だった。寂しかった。


あたしはずっと空を見上げていた。微笑みながらずっと――。