「マジ、こいつ、ナメすぎ!!」
まるでサッカーボールを蹴っているかのように、次々とあたしを蹴りはじめた。
「なんなんだよ! やり返せよコラッ!!」
殴られ蹴り飛ばされながら、あたしが顔を上げると、その先にサキが突っ立っているのが見えた。
「ほら!おめぇも突っ立ってねぇで、やっちゃえよ」
躊躇していたサキもゆっくり歩きながらあたしに近づき、唇を震わせながら、思いっきりビンタした。
好きにすればいい。そう思った瞬間、ひとりの女が木刀を、あたしのお腹を目がけて振り下ろした。
「うっ……!」
鈍い音とうめき声が静かな田んぼに響いた。
本当に死ぬかと思った。息ができなくて、あたしはうずくまって倒れた。みんな笑っていた……。
そして、うずくまるあたしに容赦なく、殴りかかってきた。
顔も体もボコボコだった。鼻血は出るわ、耳から血は出るわ、息苦しいわで、大変だった。
それでもあたしはいっさい手を出さなかった。
これでいいんだ。翼との約束だから。
意識は朦朧としながらも、女たちの動きがスローモーションのように見えていた。
サキは泣いていた。なんで泣いているのかさえ理解ができず、あたしは女たちを目の前に声を上げて笑った。
笑いつづけた。本当、頭がおかしくなりそうだった。
「こいつ、やっぱおかしいよ……、行こう!!」
笑い声と単車の音が遠くなっていくのがわかった。
いっそのこと、殺してよ……。