しばらくすると、家の前でバイクを吹かしはじめた。


あたしは自分の部屋から出て、お母さんのいる居間へ行った。


お母さんは下を向いていた。


「お母さん、ごめんね。近所迷惑だよね……」


お母さんの後ろ姿が寂しそうで、あたしは玄関に向かった。


「流奈!行くんじゃない!!」


お母さんがあわてて止めに入った。あたしは笑顔で「大丈夫だよ。すぐ戻るから」そう言って玄関を出た。


「なに……?」


家の前には単車に跨った女が4人いた。


そのうちのひとりは中1のとき同じクラス友達のサキで、ほかはバリバリヤンキーの先輩だった。


「ちょっと来いよ」


あたしは単車のケツに乗せられた。サキはあたしと目も合わせなかった。

 
しばらく走り、田んぼみたいなところで、みんなエンジンを切った。あたしは単車から降りた。


「なぁ、日の出暴走行くだろ?」


ひとりの先輩が腕を組んで聞いてきた。あたしは黙っていた。


「聞いてる?ってか、なんで電話シカト?」


それでも黙っていた。そのとき痺れをきらしたひとりが、あたしの胸元を掴んだ。


「てめぇ~、調子にのんなよ?!?」

「行かないから、電話にも出なかっただけ」


そう言うと、別の女があたしを殴った。あたしはその女を睨んだ。


「やり返せよ?暴れん坊が!!」


それでもあたしは黙って睨みつづけた。


翼との約束――。