12月31日。


あたしは部屋に閉じこもったままだった。ずっと鳴りつづけるピッチ。


先輩たちやワルたちからだった。


きっと日の出暴走のことだろう……。


そう思って電話に出なかった。


鳴りやまないコール。


あたしは電源を切った。


しばらくして、理恵から家に電話がかかってきた。


「流奈、理恵ちゃんからよ」


お母さんが電話の子機を部屋に置いていった。


あたしは悩んだ末に電話に出た。


「はい……」


電話の向こうからは、すすり泣く声だけが聞こえてきた。


「理恵?」

「……流……奈……」

「どうしたの?」


電話から聞こえる理恵の泣き声に、あたしはびっくりした。


「流奈……、頑張ったね……」


予想してなかった言葉に、我慢していたなにかがはじけて、泣きわめいた。


「流奈……責めないで? 絶対に自分を責めちゃダメ」


震えながら話す理恵。あたしは完全に言葉を失っていた。


「翼くんから電話が来たんだ。ヤツらのところへ行く前に」

「そう……」

「『流奈を頼む』ってそれだけ言って電話が切れたの」

「そう……」

「止められなくて、ごめんね」

「翼は止めても行ってたよ。きっと流奈が止めても無理だったと思う」

「流奈、お葬式、理恵も行く……」

「わかった」

「それと先輩たちからガンガン電話来て、流奈がばっくれてるってキレてたよ」

「あぁ……、電源切ったから」

「日の出暴走のこと?」

「そう」

「行かないよね?」

「うん、翼と約束したから」

「ならよかった。またあとで連絡するね」

「うん……」

電話が切れた。


夕方。バイクの騒音が鳴り響き、その音がだんだん近くなってくるのがわかった。


あたしの家の前に停まった瞬間、誰かが叫んだ。


「おい!流奈、出てこいよ~!」


あたしはシカトして、ベッドに潜りこんだ。


行かない。行かないよ。翼と約束したから……。


頭から布団をかぶった。