翼が大好きだった曲、翼が毎日聴いていた曲。


「俺なぁ、流奈が俺のそばからいなくなったとき、ずっと聴いてたんだ。繰りかえし何回も。

あのときは、もう一緒に聴くこともないのかなって思ってたけど。もうきっと、ひとりで聴くことはないな!!流奈がいてくれるから」


そう翼が言ってくれていた。


でも、翼、いまはあたしひとりでこの歌を聴いているの。翼がいないんだよ?おかしいよね?翼……。


泣きながらあたしは、最後に翼とあたしのパジャマを畳んでベッドの上に置いた。


「つばさぁ!!!」


わかっていた。


もう充分わかっていた。


どんなに泣いても嘆いても、もう二度と翼が戻ってくることはないってことくらい。


それでも涙が止まらなくて、ベッドにしがみつき、泣き続けた。


もうどうしたらいいのか本当にわからなかった。


突然、あたしの前からいなくなっちゃった翼。


あたしには、その現実をすぐに受け止めることなんて、できなかった。


これが現実なのに。


あたしは翼を裏切り、逃げ続けた。