「流奈ちゃん?本当に翼は流奈ちゃんのお陰で生まれ変わったんだよ。本当ありがとね」

「お兄ちゃん、なに隠してるの?違う!絶対なにか流奈に隠してるよ」


お兄ちゃんは返事をせず、立ち上がって机にある引き出しから手紙を出してきた。


「はい。『流奈ちゃんに』って翼から」

「えっ!?」

「読んであげて」


あたしはしばらく封筒を見つめていた。


翼からの手紙を……。


「な……んで……、なんで翼からの手紙がここにあるの……」


あたしはピンクのかわいい封筒に書かれた、「愛する流奈へ」という文字に触れた。


「どうして?」

「翼……、流奈ちゃんが寝ているあいだに書いていたんだ。ここでね。何度も何度も書き直して」

「なんで?翼になにがあったの?」


そのときあたしの頭に浮かんだのは“自殺”の2文字だった。


「翼……、もしかして自分で……?」

「違うよ!翼は流奈ちゃんを自らひとりにしようとなんてことしないよ」


あたしは封筒をじっと見てることしかできなかった。


「翼は、本当に流奈ちゃんを愛してたんだよ。けっして中途半端な愛じゃなく、本当にね」


あたしはゆっくりと話すお兄ちゃんを、手紙を握りしめながら見ていた。


「その手紙、書き終わったときに俺のところに持ってきたんだ。『もし俺が戻ってこなかったら流奈に渡してくれ!』って。翼は許せなかったんだ、流奈ちゃんを傷つけたアイツらのことを……」


「えっ?お兄ちゃん……」


「ごめんね、思い出させたら……。すべて聞いたよ。翼から。俺も殺してやりたいくらいだった!!だから翼はもっともっとだったと思う。だから俺は止めなかったんだ」


頭の中が真っ白になっていた。


「翼が言ったんだ。『俺は、流奈を傷つけたヤツらがこの世にいると思うと、許せねぇんだ』って。

だから俺は翼に『行ってこい』って言ったんだ。そしたらアイツ笑顔で『もしなにかあったら、この手紙を流奈に渡してくれ』って、俺にその手紙を渡しにきた」




あたしのために……翼が死んだ。


翼はあたしのせいで、死んだーーーー。



同じことばが頭の中を何度も何度も駆けめぐった。