「翼……?聞いてくれる?」


翼はしばらく黙ったまま、ただあたしを抱く力が強くなっていった。


その力が翼の不安を表していた。


「……うん。大丈夫か?」


なにかを察知したかのような翼の言葉が、すごくつらくて涙が出てきた。


「流奈ね……、あの日カメラがきれてたから、翼との電話を切ったあとにね……、コンビニに行ったんだ」


翼は黙ったまま、あたしの話を聞いていた。


あたしは翼の顔を見ることができなかった。


「でね、その帰りにね……」


涙で言葉が出てこなくて、沈黙が続いた。


「流奈……」

「流奈……、男たちにーーー犯されたの」

「……っ!!くっそっ」


翼は部屋の壁を思いっきり殴った。


「なんでだよ……、なんで流奈なんだよ……」


翼はあたしを抱いて泣き崩れた。


「流……奈……ごめん。思い出させて、ごめんね……。怖い思いさせてごめんな」


あたしは首を横に振った。


「翼、ごめんね。翼だけの流奈でいたかったのに。流奈、汚れちゃったよ……、ごめんね」

「流奈、ごめん……。もういい。なにも言わなくていいから……」


あたしは力が抜け、その場に座り込んだ。


翼の泣き崩れた姿を呆然を見ていることしかできなかった。


「なぁ……流奈……?」


しっかり聞かないと、聞こえないくらいの声で翼は言った。


「なに??」


なにが正しくて、なにが間違っているのかわからなかった。


翼の泣き崩れる姿を見て、言ったことを少し後悔した。


でも、戻ってきたからには隠してはいられなかった。


「流奈、話してくれて、ありがとう」


翼はあたしを抱きしめながら頭をなでてくれた。


「翼?流奈は大丈夫だから泣かないで」

「流奈が大丈夫だって言うときは大丈夫じゃ……」

「大丈夫だから!!」


あたしは翼に負けない声で言った。