「ただいまぁ~!」


翼が元気よく家に入っていく姿を見て、あたしも、「ただいまぁ~」と真似をした。


「流奈♪♪おかえり」


あたしたちは2階に上がった。


いつも上っていた階段がすごく懐かしかった。


翼が部屋の前で振り返って両手を広げていた。


あたしは思いっきり胸に飛び込んだ。


「流奈、愛してるよ」

「ありがとう」

「流奈は!?」

「流奈も愛してる」


部屋の前でKISSをした。


そこにお兄ちゃんが上がってきた。


「おいおい!相変わらずだなぁ~?お前と流奈は。なんでそんな、いつまで経ってもラブラブなわけ?」

「ってか、うるせ~よ!兄貴、なにしに来たんだよ!」

「いやね、流奈の姿、最近見かけなかったから、なにかあったのかなと思って。翼は機嫌わりぃから聞けねぇし。でも、流奈の声が聞こえたから、久々だと思って顔出しただけだよ」

「あっ、そう」

「『あっ、そう』って、なんだよ!まぁ、仲いいならよかった。にしても、翼にはやっぱりもったいね~よ」

「マジうるせーよ!向こう行けよ!」

「はいはい!部屋の前でいちゃつかないで、部屋入りな」

「ったく、うるせ~んだからよ~」


翼のお兄ちゃんは20歳で、初めて会ったときは正直、「怖そう……」が第一印象だった。


でも実は優しくて、あたしを本当の妹みたいにかわいがってくれていた。


翼とはしょうっちゅう口ゲンカ炸裂だったけど、それでも普段はすごく仲がよくて羨ましいくらいだった。


翼が仕事のときなんかは、内緒で小さい頃の写真を見せてくれたり、


翼のひどい「過去」を聞かせてくれた。


あたしの中でも“お兄ちゃん”的存在だったんだ。


だからお兄ちゃんになら、直な気持ちをなんでも言えた。