「これは翼くんの痛みの一部……」


そして、もう一度あたしをひっぱたいた。


「これは親友としてのあたしの、痛みの一部……」


理恵は泣いていた。


「こんなもんじゃないよ?あたしと翼くんの痛み」

「なんなの!?なにもわかってないくせに!なにも知らないくせに!わかったようなこと言わないでよ!好きでもどうにもならないことだってあんだよ!!」


あたしはその場に泣き崩れた。


理恵はあたしを抱きしめてくれた。


「流奈?知ってるよ。あたし、ぜんぶ知ってる……。だからもうやめてよ。自分を大切にして」

「理恵……」

「なにも言わないくていいから……。だから、お願いだから翼くんといたときの流奈に戻ってよ」


理恵も一緒になって、ふたりで泣き崩れた。


「理恵……、でもね、これはあたしが歩んできた道なんだよ。罰が当たったの。初めから翼にはふさわしくないんだよ。だから、もうこれでいいの、いいんだよ」


あたしは泣きながら理恵に話した。


「それじゃ、翼くんの気持ちはどうなるの?翼くん、流奈がいなくなってから仕事にも行ってない。抜け殻のようになっちゃってるんだよ。あんな翼くん、あたしはもう見てられないよ」

「理恵……」

「流奈の気持ちはわかるよ。流奈のことだから、汚れた自分が翼くんにふさわしくないって思ってるんでしょ?でも違う。それは違うよ。流奈、間違ってる」


自分だけがつらい。


そう思っていた。


どうしてあたしだけ……。


そう思っていた。


あたしは逃げていたんだ、現実から。


「翼くんだけだよ、流奈を受け止められるの。あんな人は二度と現れないよ。流奈、お願い、もうやめよう。もう忘れよう?幸せな流奈の顔が見たい……」


どうしてここまで理恵があたしのためにしてくれるのか、わからなかった。


あたしはこんな近くに大切なものがあることさえ見失っていた。


涙があふれた。


理恵の愛に、こんなあたしを見捨てなかった理恵の愛に。