あたしは夕方まで眠っていた。


起きて鏡を見たら、自分の顔にびっくりした。


幸せのカケラさえ残っていないような自分の顔。


そう、あたしは夢を見てただけ。これが現実。


昨日の悪夢が夢であったら……。


そう少しでも思っている自分が、すごくバカらしく思えた。


そう、これがあたし。


幸せこそが夢だったんだ……。


そう思いあたしはピッチを手に取り、久々にワルたちに電話をかけた。


「もしもし?流奈だけど」

「流奈ぁ~?マジなにしてたんだよ~!集会すら顔出ねぇし。ウチらまた単車増えたんだよ!来ればぁ~?」

「マジで?なんの単車?」

「GSだよ!流奈が乗りたがってた」

「手に入ったの?マジ行くよ~」

「おいでよ~、ってか、足あんの?」

「あっ!ないかも……」

「えっ?流奈が乗ってたヤツは?」

「もう足洗おうと後輩にあげたよ」

「バカじゃん!」

「まぁまぁ。いいから迎え来てよぉ~」

「わかったよ。じゃあ、いまからみんなで行くよ!」

「ソッコーね!!」

「あい!じゃあね」


電話を切り仕度をした。


翼、これがあたしの本当の姿なんだよ。


翼と一緒にいたあたしは本当のあたしじゃない。


そう自分に言い聞かせていた。


しばらくすると、単車を吹かす音が鳴り響いた。


あたしはヤン服を着て、鏡の前で紫の口紅を塗り、玄関でサンダルを履いた。


爆音が家の前で鳴り響く。


そのとき母親があたしを呼んだ。