そのとき、


ピロピロピローーーー。


手の中で光る電話の画面には「☆☆だぁ~りん☆☆」の文字が出ていた。


しばらく見つめながらも、翼の声がどうしても聞きたくて通話ボタンを押し、そおっと耳に近づけた。


「流奈!お前なにやってんだよ!!]


いままで聞いたことのない、翼の怒りの声。


翼の声を聞いた瞬間、またいっきに涙が溢れた。


でも、気付かれちゃダメ。


そう思い必死でこらえた。


「おい!流奈?聞いてんのかよ?」

「聞いてる……」

「なんで……、なんで急にいなく……なっ……た……」


翼の声が震えていた。


あたしは声を押し殺して泣いた。


翼……、ごめんね、本当にごめんね……。


そう思いながら出た言葉。


「別れよ……」

「な……んで……」


翼の声がうまく聞きとれず、翼が泣き声を押し殺しているのがわかった。


「な……んで……流……奈」


もうおかしくなりそうだった。


いまずぐ逢いたいって言いたかった。


でも、もう戻れない。


嫌われればいいんだ。


あたしが嫌われれば。


「なんか、毎日一緒にいて疲れた。気持ちがわからなくなったから……」


一生懸命、ゆっくり言葉にした。


泣いているのを悟られないように息を吸って。


「嘘……嘘だ……ろ? 流奈……嘘つ……くな……よ」


言葉になってない翼の声。


もうこれ以上耐えられなくて、これ以上話してたら決心鈍りそうで、


「翼……、さよなら」


翼の声を聞く前に電話を切った。


あたしから電話を切った。


翼を傷つけた。


でも、いいんだ、これでいい……。


あたしは布団をかぶり、大声で泣いた。


「翼、ごめんね……。本当にごめんね」