「なんでやめちゃったの?」
それが一番気になるところだ。
本人に訊けばいいのに…とは思うのだが、愛美は訊けないと言い張るのだ。
が、
「あぁ……それは言えない。」
兄は顔をしかめて言った。
「はぁ、なんで?」
「男の約束って奴だ。」
兄は真顔できっぱり言ったが、ちょっと待てよと思い返す仕草をする。
「聞きたいなら…
それなりのお礼とか…」
にやりとする。だから嫌だったのだ。この兄、人におごってもらうチャンスを見つけるととことんたかる。
この前は新しくできたケーキ屋のショートケーキ。
その前は兄の好物のシュークリーム。
「……。」
…代金は愛美に払わせよう。
「……何が食べたいの?」
「この前のケーキ屋のプリンかな?」
「わかった…わかったから教えて。」
思わずため息をつく。
つくづくこの兄は……と思った。
「実はやめたことに関しては、山羽先生が関与してる。
山羽先生と遙は仲が良かったんだけどある時から口利かなくなって。」
「ある時って?」
「それだけは言えない…
男の約束だから。」
「あぁ、じゃあもうプリンはなしで。」
「仕方ねぇ、それは。」
「え……?」
それさえ言えば兄はしゃべるものだろうと思っていた。
だが、その後は何もそれについては語ろうとしなかった。


