「いるんでしょ?高沢さん!ねぇ、教えてくださいよ。みんな、聞きたがってるんですよ!あなたの言葉を!双子のお姉さんについて、何かお話聞かせてくださいよ」


あたしは、何も出来ないままだった。
連日あたしと郁の家に押しかけるマスコミに怒りを感じることもなければ、
郁のために泣くことも出来ないままだったし、
自分の不甲斐なさを後悔することも出来ずにいた。



この現実から逃避するように、いつもどおりテレビをつける。
あたしは朝起きて布団から出たらまずテレビ。あたしは寝起きが悪いから。
なんとなく、テレビから流れ出る大音量を頭に流し込んで、ぼんやりとした意識を覚醒させようともがく。
それでも駄目で再びベッドに沈んでしまうことがある。そのときは、しょうがないなって顔をして郁があたしを起こしてくれるんだ。
ぽんぽんと、あたしの頭を優しくあやすようにたたきながら、あの優しい声で。
「明、朝だよ」って。



テレビの画面には、満面の笑みの郁がいた。
“美人女子大生、連続殺人事件 新たな被害者!”

そんな馬鹿馬鹿しいあおりと共に映し出された郁は、郁じゃない誰かに思えた。