「明」 あたしはまたしても、廊下で呼び止められてしまった。 桐原の声は、良く通る。あたしはその声が、昔から嫌いだった。 あたしを見て意地悪そうに笑うその顔も。 郁を見て楽しそうに微笑むその顔も。 その笑顔に、郁が顔を赤らめていた。 そんな郁を見て、あたしは桐原に嫉妬した。 あたしは、桐原が嫌いだった。 桐原なんて、いまさら会いたくなんてなかったのに。