私が修理屋との話を済ませて戻るとソファーの上の若者の姿はなかった。
…帰ってしまったのだろうか?
私は隣の部屋を覗いてみた。
そこには、雑巾で床を拭く若者の姿があった。
「何をしているのかね?」
私は笑いながら言った。
案の定、背中からいきなりかけられた声に若者は飛び上がった。
「いえ、あの紅茶のお礼を…。」
「君は客なのだからそんなことしなくていいのだよ。」
「気にしないでください。
隅から隅までピカピカにしますから。」
若者は再び床を拭き始める。
……泥棒にも色々いるようだと思いながら、
私も羽毛のはたきを持ち出して家具を掃除する事にした。