そんな津也に、闇珠はそっと耳打ちする。

「あの人とは、戦いたくないよね」

 オーブである闇珠は、李苑がサバイバーだと気付いていたのだ。

「だが恐らく、いずれ対峙する事になる。その時割り切れなかった方が負けるだろうな」

 津也は涼しい顔で言うが、心中を察することは容易い。

「でも、当たらずに済んでほしいな」

 闇珠は袖を掴んだままで言う。

「ねえ、動物園に行きたいな」

「動物園?」

「うん」

「そうだな…じゃあ、行くか」

 別段予定を決めていたわけでもない。

 闇珠が行きたいなら、それでいい。

「ドレスは荷物になるでしょ。箱に入れておくから、帰りに取りにいらっしゃい」

 言いながら、店長は別の服を出して来る。

「闇珠ちゃん、これも着てみない?」

 もうしばらく、店長に付き合うことになりそうだ。