空の神衣

 振り向くと、メッシュをかけた黒髪の店員がいた。

「李苑…あんた気付いてたのか」

 驚く津也に、李苑は皹だらけの白いカードを見せる。

「まあ、負けちゃった組なんだけどね」

「戦ってたのか、あんたも…」

 高校時代はおしとやかを絵に描いたような性格だった李苑だが、どこで何を間違ったか服装はかなり派手だ。

 もっとも、センスはいいし嫌味もない。

「ルシフェルがこうなって、私は日常に連れ戻されたわけ」

 李苑はそう言うと、白いカードを津也に差し出す。

「もう何の力も残ってないけど、御守り代わりに持ってて」

 しかし津也には、そのカードが微かに力の鼓動を刻んでいるように見えた。

「あんたの戦いは終わってないはずだ」

 カードを押し戻す。

「大方、あの二人が絡んでるんだろ」

「うん…まさか、蒼馬が乱心なんてね。危ないのは聖の方だと思ったんだけど」

 李苑は目を伏せる。

「聖の怪我は、あれは蒼馬がやったのか」

 聖が重傷を負って入院したことは津也も知っていたが、事故だとばかり思っていた。