空の神衣

 津也は背中を指す。

「火傷の跡があるんだ。あんまり、見て気持ちのいいもんじゃない」

「見られても、でしょ」

 闇珠は津也の背中に掌を当てる。

「津也がどうしても嫌なら、無理にとは言わないけど」

 見上げる闇珠の頭を撫でると、津也はシャツを脱ぐ。

「残った火傷の跡が、文字みたいだろ」

 そう言って見せた津也の背中には、『滅』の一字が浮かんでいた。

「小さい頃に火事に巻き込まれて、死にかけたらしい。覚えてないけど」

「そう…」

「な、気持ちのいいもんじゃないだろ」

 津也が浴室に向かおうとすると、闇珠に手首を掴まれる。

「傷も血も、数えきれないほど見てきたわ。…この火傷は、津也が今ここに生きてる証よ」

 闇珠は手に力を入れて離さない。

「消そうと思えば、消せるんでしょ」

「ああ。皮膚移植すれば治ると思う」