「♪~♪♪♪~♪♪」

 津也が頭を洗っている間も、闇珠はまだ歌っていた。

「何の歌だ、それ」

「何ってわけじゃないけど。勝手にフレーズが出てくるだけよ」

「そんなもんか。ほら、上向いてろ。目に泡入るだろ」

 闇珠の長い髪を、津也は丁寧に洗ってやる。

 心の葛藤がなくなったわけではない。

 警鐘は心を揺さぶり続けている。

(闇珠の心が主催者に作られたものだとしたら)

 そんな疑念が渦巻く。

(無意識のうちに、俺を取り込もうとしても不思議はない)

 無論、闇珠には悪意などない。

 だからこそ危険だ、と経験が告げる。