霧のように消えそうな津也の魂が、傷ついていない。

 そう言われても、信じられるものではない。

 アガートラームが呆然と津也を見ていると、剣がまた語りかける。

『魂は傷ついていませんが、彼の体は辛うじて存在を保っているだけ。もう触れることもできないのです』

 その言葉に、アガートラームは自分が津也にしてやれることを見出す。

 ただ、気に入らないこともある。

「なぜ、そんなことを私に教える」

 心を見透かされたようで、アガートラームは面白くない。

「何か思惑でもあって、出てきたようだな」

 剣の言葉に、アガートラームは作為を感じずにはいられない。

『私は、あなたです。戦いの中であなたが忘れた感情が私なのです』

 唐突な言葉だが、自分が自分の心を見透かせるのは当然だ。

 アガートラームは妙に納得していた。