「ここから先は、部外者お断りだ」

 津也が闇珠の背後を指すと、霞が扉のように開く。

 闇珠は意を決すると、津也に背を向ける。

「先に帰って、紅茶でも入れて待ってるわ。早く帰ってきてね」

「ああ」

 立ち去る闇珠を、津也は視界の端に捉えて見送る。

(帰れたら、な)

 その一言は、言葉にはできない。

 闇珠も、分かっていて聞かなかったのだろう。

 津也は、この空間から出るつもりなどない。

 それを認めることができないから。

 津也の意思を阻むわけにはいかないから。

 だから、闇珠は立ち去るしかなかったのだ。

 霞が閉じ、闇珠の姿が見えなくなる。

「待たせたな」

 アガートラームに向き直ると、津也の体をプロテクターが覆う。

 それは、まるで夜空を切り取ったような漆黒であった。