空の神衣

 津也は深く頷く。

「助けるのは、難しくなかっただろうさ。だがもし、ルイが他人だったらそんな事考えもしなかった。 違うか」

 不意に、津也は李苑の方を見る。

 李苑は答えに詰まる。

 考えたくなかったことだから。

 確かに、ルイが全くの他人であれば、どんな窮地にいようと李苑は意に介さなかっただろう。

「勘違いするな。責めてるわけじゃないんだ」

 津也は視線を李苑からアリアスに戻す。

「李苑の考え方の方が、まともなんだよ。たけどな、鬼になれないなら戦う資格はない」

「覚悟とは、そういうことだ。非情に徹しなくては勝てない。誰かに頼っていては生き残れない」

 アリアスが続ける。

 ようやく、李苑も理解した。

 ルイが自分の力で生き残らなくては、手を差しのべてもその場しのぎにしかならない。

 ルイをサバイバーとして認めるからこそ、二人は静観するしかなかったのだ。

 ルイを戦士として見ていなかった自分の言動が
綺麗事でしかないと、事ここに至って思い知らされた。

 津也が、アリアスが、どれほど歯痒い思いでいたか。

 李苑には推し図ることもできない。

「もう少し傷が浅ければ強制退場って手もあったんだけどな」

 津也の声に疲労の色が滲む。

 強敵と睨み合うだけでも、著しく消耗しているのだ。