空の神衣

 李苑には、二人の考えが分からない。

 津也はもちろん、アリアスも友を見捨てるような薄情者ではない。

 ならばなぜ、あの時ルイを助けなかったのか。

 そしてなぜ、今二人は戦おうとしているのか。

 そんな李苑の思考をよそに、アリアスは徐徐に旋回の円を小さくしていく。

 津也はやはり全く動かないまま、ぽつりと呟くように言う。

「わざわざ出てこなくても、安全圏から攻撃すれば済んだだろうに。出たがりだな、相変わらず」

 アリアスは笑って答える。

「不意打ちなど邪道。借り物の力で戦って、それで勝っても、私の勝利だなどとは言えない」

 言った直後、アリアスの姿が李苑の視界から消えた。

 ドンッ

 固い物がぶつかるような、重い音が響く。

 見ると、アリアスの踵が津也の左肩を捕えていた。

「錘月…初めて見せた技にカウンターか…」

 よろめくアリアス。

 李苑の位置からでは見えなかったが、アリアスは振り下ろした脚にアッパーで肘を撃ち込まれていたのだ。