空の神衣

「滅んだはずの技、見事に蘇らせたな」

 背後からの声に李苑が振り向くと、燃えるように赤い長髪の大男が立っていた。

 アリアス・シュールストロム。

 高校時代、空手部にいた津也と何度も対戦した因縁がある。

「人が一戦交えて、しかも手負いの時に出てくるかよ」

 撫然として言う津也にアリアスはさらりと答える。

「宿敵が手傷を負っているなんて、こんな好機を逃すわけがないだろう」

 そう言うアリアスの目は、笑っていなかった。

 むしろ、獲物を狙う猛禽のそれに似ている。

「古寺で見つけた武道書の技をやってみようと言い出したのは私だが、正直本当にできるとは思っていなかった」

 言いながら、アリアスはヨットパーカーを脱ぎ捨てる。

「実際にできた時は、感慨ひとしおだったよ」

 タンッ

 タンッ

 ジーンズにロングブーツの長身が、羽でも生えたように軽やかに舞う。

「…どのへんから見てたんだ」

 対照的に、津也は深く腰を落として構え、微動だにしない。

「李苑が、津也の足を凍らせたあたりかな」

 ステップワークで津也の周りを旋回しながら、
アリアスも疑問を口にする。

「あの時の敵だが、サバイバーとは違うように感じた。あれは一体何だったんだろうな」

「お前…やっぱり、あの時見てたんだな」