空の神衣

 津也は李苑を指差して言う。

「李苑、お前は何のために戦ってるんだ」

「それは…」

 言いかけて、李苑は言葉に詰まる。

「元々は、蒼馬の暴走を止めるためだったんだろう。だが今はどうだ」

 李苑はようやく、津也の言わんとする事を察した。

「蒼馬の行動が狂気によるものでないと知った時に、李苑が戦う理由はなくなったんだよ」

 だから李苑は勝てないのだ。

 理由もなく戦うな。

 津也はそう諭しているのだ。

「誰だろうと、挑んでくるなら手加減はしない。どうするかは、李苑が決めることだよ」

 津也の五体に、再び力感がみなぎる。

「潰れた腕でも、俺は勝てるよ」

 李苑は気付いた。津也の目が、自分を見ていないことに。