「そこまでして…」

 李苑は言葉もない。

 なぜ、そこまでして戦うのか。

 なぜ、圧倒的に力量で劣る自分にそれほどの技を使うのか。

 聞いてはいけないような気がしたのだ。

「殲翼なんか使わなくても、李苑には負けない。片腕潰してまで使う理由はないんだよ」

 平然と言ってのけ、津也は破れたシャツを脱ぎ捨てる。

「それでも殲翼を使ったのが、俺が負けない理由だ。失敗したけどな」

「失敗?」

 唖然とする李苑に、津也は身振りを入れて答える。

「殲翼は押し潰した大気が生み出す気流で目標を斬る技だが、衝撃で腕が跳ね返された。李苑はその余波で吹っ飛んだだけだよ」

「そん…」

 詰め寄ろうとして、李苑は全身を駆け巡る激痛に苦悶する。

 余波だけで言葉もないほどのダメージを与える技を、まともに受けたらどうなるのか。

 李苑は恐ろしかった。

 殲翼という技が。

 津也が。