(倒れてくれ!)

 それは、もはや祈りであった。

 蒼馬のダメージは軽くはない。

 これで仕損じでもすれば、反撃をしのぐ術などない。

(倒れてくれ!)

 更に強く念じる。

 ザ…

 見えない敵に絡みついたルイの血が、少しずつ崩れていく。

 そして、黒い人型が現れた。

(こいつが!ルイを…)

 睨みつける。

 その人型も、吹き散らされるように消えた。

「やった…ね」

 振り向くと、ルイの体が大きく傾いだ。

 慌てて抱きとめる。

「もっと早く、こうしてほしかった…な…」

 ルイの声には、力がなかった。

「待ってろ、今手当てをしてやる」

 李苑達を呼びに行こうとする蒼馬を、ルイがその腕を掴んで止めた。

「いいよ…もう、いい」

 自分はもう助からないと、ルイの目が告げている。

「そんな…ルイだけ…なんで、こんな目に遭わなきゃならないんだ」

 泣き出しそうな蒼馬の手を握り、ルイは言う。

「蒼馬…戦いなさい」

 うすれゆく意識の中、ルイは必死に笑みを浮かべる。

「もし…生まれ変わったら…今度は…」

 そこまでで、限界だった。

 蒼馬の腕を握っていた手から力が抜け、垂れ下がる。

 パァン!

 破裂音と共に、ルイは蒼馬の手の中から弾ぜ消える。

 信じられない。

 いや、信じたくない。

 蒼馬の思考は、現実の認識を拒否した。

 しかしやがて、蒼馬は静かに立ち上がる。

「太刀風、武装解除」

 纏った鎧が消え、青いカードに戻る。

「約束するよ、ルイ。目的を果たすまで、オレは戦う。絶対、逃げたりしないよ」





『よかったの?助けなくて』

 闇珠の問いに、津也は平然と答える。

「それを、甘さと言うんだよ。人としては正しくても、戦士としては誤った行為だ」

 言いながら、ルイがいた方へ手を合わせる。

「やっぱり、こんな鬱陶しい戦いは終わらせたいな」





―神逆ルイ

 死亡