「蠍の攻撃は受けてないハズなのに…誰にやられたんだ?」

 一連の光景を見ていない蒼馬には、何が何だか分からない。

『彼の者、深刻な深傷を追っておるな。じゃが、正常な意識を保っておるようじゃ』

 太刀風のいたって冷静な分析が、蒼馬を苛立たせる。

「そんなことはどうでもいい。一体誰が、ルイをあんな目に遭わせたって言うんだ」

 周囲を見回してみる。

 しかし、敵の姿は見当たらない。

「とにかく、早いとこ手当てをしないと」

 駆け寄ろうとする蒼馬を制したのはルイだ。

「来ないで」

 腕を突き出して蒼馬を踏みとどまらせる。

「私には、今ここでやるべき事がある。あなたには、その先にやるべき事がある。分かって」

 そう言った直後、ルイの体が震えた。

「っぐうっ…」

 苦痛に耐え、ルイは自分を刺した『何者か』を両手で掴む。

 握力がなくなっているためすぐに振りほどかれるが、思念を込めた血は見えない敵の存在を暴き出していた。

「蒼馬っ、あと任せた」

 へたりこみながら振り向くと、蒼馬は既に動いている。

「行くぜ太刀風!」

 戦鎚を握る手に力を込める。

「降魔絶命鎚!」

 渾身の一撃が、ルイの血に捕われた敵を痛打する。