ボォンッ

 気づいた時には、李苑は空中にいた。

 さらに一瞬の後、砂地に激しくたたきつけられる。

「ぐうぅっ!」

 衝撃で、一瞬息ができなくなる。

 ややあって身を起こすと、ルイが棒立ちになっている。

(だめ、逃げて…)

 叫ぼうとしたが、声が出ない。

 李苑には、ルイが正気を失っているように見えた。

 しかし実際には、ルイは至極冷静に状況を分析していた。

(さっき見えた人型、姿を消す能力がある…しかもかなり素早い)

 砂が渦を巻いたのが見えた直後に攻撃を受けたことから、ルイは敵の機動力がかなり高いと判断した。

 同時に、見えなくなるのは人型自身だけであることにも気付いていた。

(ということは、砂のように何かをかけて色をつければ、隠れる事はできないはず)

 だが、色をつけられる物など手元にはない。

 何か打つ策はないものかと、ルイはふと口許を押さえていた手を見た。

(…これだ!)