(しまった…コイツのこと忘れていた…)

 ドシャッ

 蒼馬は砂の上に倒れこんだ。

 しかし、そこにいる誰もその様子に気付いてはいない。

 それどころではなかったのだ。

 一瞬見えた影を直感で敵と判断したルイは、即座に攻撃を仕掛け―ようとした。

 ぞぐん。

 下腹部の重圧と灼熱感が何なのか、すぐには分からない。

 むしろ、離れていた李苑と晶には全てが酷明に見てとれた。

 突如、ルイの腹を何かが撃ち抜いたのだ。

 さらにその直後、ルイは激しく喀血した。



 がはっ…



 鮮血と共に、ルイは呼気を吐き出した。

 急速に、全身から力が抜けていく。

(私、死ぬんだ…)

 どうしようもない現実を、ルイは遥か彼方の出来事かのように感じていた。

「ルイ~っ!」

 晶は思わず叫んで駆け寄ろうとするが、距離がありすぎる。

 然程離れていない李苑はというと、眼前の光景を受け入れることすらできずにいる。

「え…な…何?」

 その停滞が、さらに事態を悪化させる。