ただ一人、ルイだけが津也の攻撃に気付いていない。

 その眼前で、突如砂が吹き上がる。

 ドパアァァッ

「なっ、何?」

 思わず手で顔をかばったルイは、降り注ぐ砂が人型に渦巻くのを見た。

(あれは…一体?)

 離れていた李苑も、その光景を見逃さない。

「何?あれ…」



 蒼馬はそれどころではない。

 津也が放った力弾のうち二発は、蠍を撃つべく蒼馬の至近距離に炸裂したのだ。

 まず一発が着弾し、砂を吹き飛ばす。

 ドオオォォォッ

 すると、隠れ場のなくなった蠍が這い出る。

「なんだかわかんねえけど、チャンス!」

 蒼馬は勢いこんで戦槌を構えるが、そこへ二発目が着弾する。

 ギヒイイィィィン…

 蠍の頭上に炸裂した力弾は、膨大な重力でのしかかる。

 仕掛けるタイミングを失った蒼馬が呆然と見ていると、蠍がひしゃげ始めた。

 ビシイイィィィ…

「何だ何だぁ?」

 戦槌を構えたまま蒼馬が見ている前で、蠍の体に亀裂が走る。

 グギャイイィィン!

 力弾の重圧に耐えきれず、蠍は押し潰された。

「何なんだよ、一体…うわおあぁぁっ」

 拍子抜けして戦槌を降ろした蒼馬は、背後からの衝撃波を無防備で浴びてしまう。