「な…なんやなんや、砂漠がグラグラ揺れとる」

 危うく足を取られそうになりながら、晶が声をあげる。

 李苑も杖につかまって耐えている。

「…この感覚、やっぱり何かおかしい…。流砂というより、掻き回されているような…」

「こんだけの砂掻き回すて、並の力じゃムリやと思うけど」

 晶が言うと同時に。

 ボッ!

 噴水のように砂が舞い上げられる。

 その時、二人は砂の中にいる鋼鉄の蠍に似た異形を確かに見た。

「でか…」

「大きい…」

 雪崩れ落ちる砂の中に一瞬見えた褐色の巨大な姿は、虚空を横切った影とは全く違っていた。

「あいつがルイを…空飛んどる奴とは別やったんか」

 驚嘆する晶をよそに、李苑は別のことに驚いていた。