「シオオォォォンッ!見いいいぃぃぃつけたぜえええぇぇぇっ」

 耳を突ん裂く金切り声をあげ、アルベルトが両手のムチを振る。

 ピシイィッ

 意図してかどうか、明らかに的を外したムチが空を切り、乾いた破裂音が響く。

『ケイローン、痺れるムチさばきを見せてやろうぜぃ』

『イヤアアァァァッ、りょおおぉかあぁぃ』

 アルベルトの声に、ヒステリックな女の悲鳴が答える。無論、津也達には聞こえない。

「シオンと因縁があるのか…おわあぁっ!」

 視界の端にムチの穂先が見え、津也は慌てて身を翻す。

 その穂先が地面をえぐり、

 バシュウゥゥッ!

 熱湯を撒くような音と共に、激しく蒸気が立ち上る。そしてたちこめる異様な悪臭。

「っ、この臭い…毒?」

 津也の呟きに、シオンが答える。

「そう、コールティールのムチは、棘に毒があるのです。それも、厄介なことに腐敗毒」

「なんて鬱陶しいやつなんだ…」

 津也がうんざりしていると、シオンがずいと前に出る。

「これは私の問題です。あなたは下がっていてください、シンヤ」

「なんだって?」